NAEMTによるAMLSコースの位置づけの変更と、それにともなうAMLSインストラクター候補者に求められる要件の変更に関するお知らせ

NAEMTによるAMLSコースの位置づけの変更と、それにともなうAMLSインストラクター候補者に求められる要件の変更に関するお知らせ

北米救命士協会のAMLSコースはAHAのガイドライン更新と連携しており、AMLSコースの位置づけについても新しいガイドラインの発表の機会にあわせて見直されています。

以前のG2010まではAMLSコースの位置づけは、AHAのACLSコースと対で次のように捉えられていました。

1)内科救急患者の初期治療(病院前救護と病院救急医療)のうち心停止と心停止が間近な患者への対応はACLSコースで学び、非心停止はAMLSコースで学ぶ。

2)AMLSコースはACLSコースで心停止と心停止が間近な患者の対応を学んでいることを前提とする。  このようにG2010ではAMLSコースはACLSコースの上位コースとして位置づけられていました。  これが根拠となりAMLSコースのインストラクター候補者は、ACLSインストラクターの資格を有することが求められていました(AMLSコースを受講する前提としてACLSプロバイダーであることが求められたのも同じ理由です)。

 

AHAのG2015の発表を契機に、AMLSコースの位置づけが変更されました。変更点は以下の通りです。

  1. AMLSコースは内科救急診療における臨床推論を広く普及するコースである(再定義されました)。
  2. AMLSコースとACLSコースの関連性は問われなくなった。  これらを根拠として、NAEMTはACLSコースをAMLSコースの前提すること、すなわちAMLSコースの受講資格にACLSプロバイダーであること、さらにAMLSインストラクター候補者にACLSインストラクター資格を求めなくなりました。

新しいNAEMTの方針は次のようになりました。

  1. AMLSコースは内科救急診療の臨床推論の能力を強化したい医療者を対象とする。
  2. 受講するためにACLS/PALSプロバイダーなどの資格は必要としない。
  3. 同じように、AMLSインストラクター候補者にACLS/PALSインストラクターなどの資格は必要としない。

(解剖学,生理学,病態学の知識基盤を前提とすることは変更ありません.)

(これから臨床推論を学ぼうとする方には不向きです.)

 

お知らせは以上になりますが、以下はJSISHの考え方です。

第一点

今回から、AMLS/PHTLSのインストラクターになるためにはNAEMTのオンライン教材を使ってインストラクターコースを修了することが必要になりました(受講者が自分のコンピュータとWiFiを持参する集合学習も可能です)。このインストラクターコースはコース運営に必要なノウハウのみならず、学習科学や成人学習理論などをカバーし、とても優れた教材になっています。AMLS/PHTLSのインストラクターがこの内容、この理論を実践することで、コースの質が担保されます。

第二点

ACLSコースではアルゴリズムの使い方など医療のパフォーマンスの知的技能に焦点を当てたインストラクションを行います。

加えて、AMLSコースでは、内科救急患者の初期治療を行うというタスクのうち、診療推論に焦点を当てたインストラクションを行います。臨床推論のなかで知的技能を思いだしそれを使った問題解決も必要になります。  このようにAMLSコースのインストラクションは、知的技能のインストラクション(ACLSコースタイプのインストラクション)を内包しています。知的技能のインストラクションの方法をAMLSコースのなかで応用することで(それが必要な受講者に対して)、AMLSコースのゴール到達を効果的・効率的・魅力的に行う精度が向上すると考えられます。  この意味から、JSISHではAMLSインストラクターは、ACLSインストラクターであることを推奨しています。

日本医療教授システム学会 教育・トレーニング委員会  (2015/11/1)