第1回日本医療教授システム学会総会

開催概要

テーマ:ストップ!医療崩壊 「医療再生は人づくりから」~人材養成のサイエンスとアート~
大会長:池上 敬一(獨協医科大学越谷病院 救急救命センター長)
日 程: 2009年2月20日(金)~21日(土)
場 所: 学術総合センター(東京)

ごあいさつ

医療事故、医療格差、医療崩壊、医師・看護師不足といった問題群が一気に顕在化し、医学教育と医療者養成を含めた医療のあり方は、いま抜本的な改善を必要としています。これは医療に限ったことではなく、教育と職能訓練の問題はわが国のすべての産業にあてはまることで、それぞれの領域でこの課題を解決する必要に迫られています。
医学教育・医療者養成・医療のあり方はわが国の基本的なインフラストラクチャであり、その意味でこれらの改善を早急かつ優先的に行う必要があります。行政、アカデミア、教育・医療機関の管理者レベルでは、それぞれが様々な方策をたてていますが、「現場の人材養成」にフォーカスを絞ったシステム的、科学的かつ具体的な実践は行われていません。
「医療現場の人材養成」すなわち「医療者のパフォーマンス向上」は、医療系教育機関と医療機関のパフォーマンスを押し上げる原動力であり、医療者と医療チームのパフォーマンスの向上なくして組織・機関の存続と成長を期待することはできません。

日本医療教授システム学会はHuman Performance ImprovementHPI)の観点から、医学・医療と多彩な領域(教授システム学をはじめとする教育工学、Information and Communication TechnologyVirtual Reality、認知心理学、関連産業など)が横断的に共同し、医療教育・訓練システムを開発・普及することを目的に設立されました。
1回日本医療教授システム学会総会では、テーマとして医療崩壊に対する処方的対策を取り上げ、医療再生の起点を医療者・チームのパフォーマンス向上を目的とした医療教授システムの開発に置きプログラムを組み立てました。

以下、プログラムをご紹介いたします。シミュレーション医療教育・訓練は、医学・看護教育と現場で求められる医療者のレベルのギャップを埋める方法として(シンポジウム14、パネル1)、そして医療の質と安全性を担保するための訓練法として期待されています(シンポジウム23、ワークショップ2)。このトレンドは世界的なもので(招待講演)、学習を効果的、効率的かつ魅力的にするための科学として「教授システム学」(セミナー)と「インストラクターコンピテンシー」(International Boards of Standards for Training, Performance and Instructionibstpi)が取り入れられています(セミナー)。
シミュレーション技法を活用するには、これらのサイエンスを身に付けたファシリテーターの養成が不可欠になります(セミナー)。医療者のパフォーマンスを向上するにはシミュレーションだけでは十分ではなく、ワークプレイスラーニングと組み合わせ相乗的効果を上げる必要があります(セミナー)。医学教育と医療訓練の連携も重要なテーマです(パネル1)。これまでのカタログ的な教科書ではなく、医療訓練と医学教育の場面で利用可能な教材作成と学習の試みを紹介いたします(セミナー)。医療の中でも救急医療は早急に強化・充実しなければならない分野です。救急医療の場は医療者・チームのタスク遂行能力を向上させるには最適な場ですが、それには急性期医療を担うプロフェッショナルのコンピテンシー分析とそれに基づいた人材養成プログラムが必要になります(セミナー)。またハンズオンセッションでは日本医療教授システム学会が提案する医療教授システムの実践を体験していただけます。

以上、第1 回日本医療教授システム学会総会開催にあたりご挨拶とご案内をさせていただきました。皆さまにはこの機会を活用していただき、サイエンスとアートに基づいた人材養成、ひいては医療再生のヒントや方法論を理解・身に付けていただければ主催者として幸甚です。皆さまのご参加を心よりお待ちしています。


わが国の医療は「高度・先端医療」「専門医療」「医療費抑制」を推進してきましたが、その一方で「医療事故」「医師・看護師不足」「医療崩壊」「医療格差」といった問題が深刻化しています。これらの問題に対し医療安全管理、臨床研修制度の導入など外枠の対策は取られてきましたが、良質で安全な医療を実践できる医療者を継続的に養成する科学的かつシステム志向の取り組みは行われてきませんでした。

日本医療教授システム学会(Japan Society for Instructional Systems in HealthcareJSISH)は、現在の医療を取り巻く課題を学際的(医学、教育工学、工学・IT、認知心理学等)かつ組織・団体・学会を横断する仕組みで打開するために設立されました。

JSISH200922021日、第1JSISH学術総会を開催いたします(学術総合センター、東京都千代田区)。「医療崩壊」が進行するわが国の医療を蘇生するためには、社会と地域が求める良質で安全な医療者を効果的・効率的かつ持続的に養成するシステムを構築することが急務になっています。このような社会的背景から第1JSISH学術総会のテーマを「医療再生は人づくりから」(人材養成のサイエンスとアート)としました。

第1回 日本医療システム学会総会大会長
代表理事 池上敬一
(獨協医科大学越谷病院救命救急センター)
第1回日本医療教授システム学会総会 大会長:池上 敬一(獨協医科大学越谷病院 救急救命センター長)

プログラム

プログラム(タイムスケジュール)(PDF)

プログラム 1日目
Keynote
シミュレーション医療教育・訓練の実践と今後の展望
日本医療教授システム学会 池上 敬一 

Symposium 1
医学教育と医療者養成
司会:国立国際医療センター 木村 昭夫  
   聖路加国際病院 石松 伸一
SY1-1 シミュレーション医学教育を大学教養教育に利用
岐阜大学医学部 寄生虫学 高橋 優三 他
SY1-2 シミュレーション教育の効能 
~シミュレーション甲子園に参加前と参加後の変化
飯塚病院 救急部 奥田 拓史 他
SY1-3 一貫した卒前・卒後の医学教育と良医養成の連携
愛知医科大学 医学部 医学教育センター 福沢 嘉孝 他
SY1-4 ICLSコース受講後の知識と技術の維持
国立病院機構大阪医療センター 救命救急センター 総合救急部 鶴和 幹浩 他
SY1-5 ヴェトナム人医療従事者に対するシミュレーション蘇生研修コースの普及
国立国際医療センター 戸山病院 救急科 木村 昭夫 他

Sponsored Seminar 1
院内教育担当者のための教材設計とインストラクション
司会:獨協医科大学越谷病院 池上 敬一  
熊本大学大学院教授システム学専攻 鈴木 克明  

Symposium 2
医療者の質保証・医療安全とシミュレーション
司会:大阪大学医学部附属病院 中島 和江  
大阪医療センター    鶴和 幹浩  
SY2-1 医療の質・安全向上への取り組み:M&M カンファランス(Morbidity&Mortality Conference)の意義
県西部浜松医療センター 救急科 佐々木俊哉 他
SY2-2 大阪医療センターにおける研修医教育の為の
カンファレンス(寺子屋)の試み
国立病院機構大阪医療センター 救命救急センター 鶴和 幹浩 他
SY2-3 医療安全におけるシミュレーション教育
東京医科大学病院 卒後臨床研修センター 阿部 幸恵  
SY2-4 ISLS アルゴリズムのクリニカルマップへの展開
-脳卒中チーム医療教育シミュレーションへの導入
川崎市立川崎病院 救命救急センター 救急科 安心院康彦 他
SY2-5 大阪大学医学部附属病院における、
院内発症の心肺停止症例に関する検討
大阪大学医学部付属病院 高度救命救急センター 入澤 太郎 他
SY2-6 臨床検査技師の救急処置に対する意識
~大阪府臨床検査技師会ICLS コース開催して~
大阪市立大学医学部スキルスシミュレーションセンター 小澤 朋子 他

Workshop 1
シミュレーションセンターの開設と運営
司会:KKR シミュレーション・ラボセンター、虎の門病院 中西 成元  
横浜市立大学附属病院 紙谷あゆ美  
WS1-1 本学スキルスシミュレーションセンター(SSC)の成果と課題
大阪市立大学 総合診療センター・卒後医学教育学 首藤 太一 他
WS1-2 麻酔(教育、シミュレーション)センターの設立と運営上の問題点について
兵庫県立がんセンター 麻酔センター 尾原 秀史 他
WS1-3 国家公務員共済組合連合会シミュレーション・ラボセンターの開設と運営の
問題点について
虎の門病院 医療安全アドバイザー、KKR シミュレーション・ラボセンター長 中西 成元  
WS1-4 医療系専門学校におけるシミュレーションセンター新設までの道のりと展望
吉田学園医療歯科専門学校 救急救命学科 三上 剛人  
WS1-5 当救命センターにおけるWorkplace-based Simulation(WBS)
獨協医大越谷病院 救急医療科 杉木 大輔 他

Seminar
Work‐based Learning
司会:獨協医科大学越谷病院 池上 敬一  
京都大学医学研究科医学教育推進センター 平出  敦  

Workshop 2
医療機器使用時のクライシスチームトレーニング
司会:虎の門病院 川畑 雅照
KKRシミュレーション・ラボセンター 大森 正樹  
WS2-1 血液浄化療法におけるシミュレーション教育 シナリオトレーニング
虎の門病院分院 臨床工学部 血液浄化療法室CE 科 柴田 奈美 他
WS2-2 Apheresis Technology Square のトレーニングカリキュラムについて
旭化成クラレメディカル株式会社 ME 機器センター 岡田 知子 他
WS2-3 体外循環技術教育用シミュレータECCSIM のPCRM 教育への適用可能性
広島国際大学 保健医療学部臨床工学科 二宮 伸治 他
WS2-4 シミュレーション実習を取り入れた人工呼吸器安全教育の試み
済生会横浜市東部病院 ME センター 山田 紀昭 他

Workshop 3
新人・再就職看護師のタスク訓練
司会:東海大学 剣持  功
首都大学東京 織井優貴子
WS3-1 臨床場面のシナリオを使った新人看護師技術トレーニングの評価
済生会熊本病院看護管理室兼人材開発室 杉野由起子 他
WS3-2 新人看護師のタスクトレーニングと評価
済生会熊本病院TQM 部兼人材開発室 白鷹 雅美 他
WS3-3 再就職看護師の教育プログラムの検討
獨協医科大学越谷病院 救命救急センター 金子美由紀 他

Skill up Seminar 1
ICLS、ISLS インストラクタースキルアップ・セミナー
「インストラクション」の奥は深いものです。「インストラクター」として成長するには、
自己のインストラクションの振り返りと成長のためのヒント(「壁」を乗り越えるための
梯子かけ)が必要です。このセミナーでは、代表的な国産シミュレーションコースである
ICLS(Immediate Cardiac Life Support:日本救急医学会)とISLS(Immediate Stroke
Life Support:日本救急医学会、日本神経救急医学会)のインストラクターを対象に、ス
キルアップ・ステップアップのヒントを提供いたします。
進行:富山大学   奥寺  敬  
済生会水戸総合病院 松本 尚浩  
香川大学      中村 丈洋  

Seminar
救急外来医学トレーニングプログラム
司会:国立国際医療センター 木村 昭夫  
東京大学医学部附属病院 救急部・集中治療部 軍神 正隆  

Panel 1
医学教育とシミュレーション
司会:岐阜大学 高橋 優三  
日本医科大学 志村 俊郎  
PD1-1 臨床実習のための擬似モニターの開発 第2 報
都立広尾病院 佐々木 勝 他
PD1-2 医学教育におけるシミュレーターの活用 ~ OSCE 評価において~
東邦大学医療センター大森病院 救命救急センター 本多  満 他
PD1-3 医学教育における救命救急診療シミュレーションコースの開発
大阪市立大学大学院 医学研究科 救急生体管理医学 高松 純平 他
PD1-4 急変時対応教育におけるビデオ教材とシミュレーション教育の
シナジー効果の検討
慶應義塾大学医学部 循環器内科 田村 雄一 他
PD1-5 一般市民に対する心肺蘇生法講習の検討(第2報:受講様式の検討)
富山大学大学院 医科学専攻修士課程 救急災害医学講座 山本由加里 他

Panel 2
医療者養成の評価と共同研究システム
司会:虎の門病院 香取 秀行  
聖ルカ・ライフサイエンス研究所 徳田 安春  
PD2-1 内視鏡下鼻内手術(蓄膿症手術)手技のトレーニングシステム
(独)産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門 山下 樹里 他
PD2-2 歯科診療所患者急変ムービーに対する歯学部学生の評価
明海大学歯学部総合臨床医学講座麻酔学分野 内田 茂則 他
PD2-3 シミュレーションによるチーム診療能力の評価
~シミュレーション甲子園大会の実施と考察より
独立行政法人労働者健康福祉機構 関東労災病院
医療マネジメントフェロー/総合内科 小西 竜太 他
PD2-4 シミュレーション教育の効能 
~シミュレーション甲子園に参加前と参加後の変化
㈱麻生 飯塚病院 救急部 奥田 拓史 他

プログラム 2日目 2月21日(土)
記念講演 (同時通訳)
Simulation in Healthcare: World Wide Collaboration
Associate Professor of Anaesthesia, Harvard Medical School Bioengineer,
Department of Anaesthesia and Critical Care, Massachusetts General Hospital,
Boston, Massachusetts, USA
  Daniel Raemer, MD.
司会:帝京大学 澤 智博  

Symposium 3
シミュレーション医療訓練の国際連携
司会:富山大学 奥寺  敬  
獨協医科大学越谷病院 池上 敬一  
SY3-1 世界のシミュレーション医療教育・訓練の現状
富山大学医学部 災害・救急医学 奥寺  敬  
SY3-2 International Simulation Network – Pan pacific, Asian perspective
ハワイ大学医学部SimTiki Benjamin Berg  
SY3-3 International Simulation Network – SSH perspective
マサチューセッツ総合病院麻酔・集中治療 Daniel Raemer  
SY3-4 A competency-based approach to training for healthcare professionals
Education, Media&Society International Christian University Insung Jung他
SY3-5 シミュレーションから医療教授システムへ -今後の展望
日本医療教授システム学会 池上 敬一  

Sponsored Seminar 2(同時通訳)
Nursing Simulation at University of Hawaii:ハワイ大学における看護シミュレーション
ハワイ大学 Lorry Wong RN  
司会:呉大学 岩本 由美

Symposium 4
看護教育とシミュレーション
司会:獨協医科大学越谷病院 浅香えみ子  
呉大学 岩本 由美  
SY4-1 看護基礎教育における高性能シミュレータ活用の試み
首都大学東京 織井優貴子  
SY4-4 『患者急変対応コースfor Nurses』の学習効果とその現状
獨協医科大学越谷病院 救命救急センター 川合いずみ 他
SY4-5 救急看護師のトリアージ教育を考える
武蔵野赤十字病院 西塔依久美 他
SY4-6 当救命センターにおける救急初療チームの教育と訓練法
獨協医大越谷病院 救急医療科 杉木 大輔 他

クロージング
富山大学 奥寺  敬  

Workshop 4
わたしたちのシミュレーションラボセンター
司会:東京慈恵会医科大学  武田 聡  
KKRシミュレーションラボセンター 大森 正樹  
WS4-1 シミュレーショントレーニング環境整備における工夫
社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院 人材開発室 濱田 倫朗 他
WS4-2 慶應義塾大学クリニカル・シミュレーション・ラボの取り組み
慶應義塾大学医学部 医学教育統轄センター 安井 清孝 他
WS4-4 血液浄化治療のトレーにニングセンター設立について
旭化成クラレメディカル㈱ME 機器センター 新村 眞史 他
WS4-5 慈恵医大及びNPO 法人愛宕救急医療研究会での取り組み
東京慈恵会医科大学 救急医学講座 武田  聡 他

Luncheon Seminar
脳卒中初期診療(ISLS)にみる新しい教材のあり方・学び方
富山大学医学部 危機管理医学救急・災害医学 奥寺  敬  
司会:川崎市立川崎病院 安心院康彦  

Skill up Seminar 2
インストラクターコンピテンシー・セミナー
慈愛会今村病院分院 加塩 信行
International Board of Standards for Training, Performance, and Instruction(ibstpi)が発表したInstructor Competencies - Standards for Face-to-Face, Online, and Blended Settings とそれに基づいて作成されたアメリカ心臓協会「コア・インストラクター・コース」の真髄を体験していただきます。医療者の質を保証する教育・訓練では必須の知識・スキルになりますので、この聴かにぜひ受講をお勧めいたします。

患者参画医療 1
そら豆塾
企画:聖路加国際病院 石松 伸一  

患者参画医療 2
職種を越えた蘇生教育活動 ~蘇生の心、その願いの下に~
名古屋大学大学院 医学系研究科 病態内科学講座 血液・腫瘍内科学 杉浦 立尚  

患者と医療者のコミュニケーション:ヘルスコミュニケーションの視点から
マッキャンヘルスケアワールドワイドジャパン パブリックヘルス 主任研究員
株式会社マッキャンヘルスケアワールドワイドジャパン 石川 善樹  
香川大学医学部学生 浜谷 英幸  

医療者が患者をリードするコミュニケーションに向けて
東京大学工学部助教 西原 陽